インプラントと入れ歯の徹底比較|あなたの選び方
インプラントブログ入れ歯

歯を失ってしまった時、「どの治療法を選べばいいのだろう?」と悩まれる方は少なくありません。特に、インプラントと入れ歯の選択に迷われる患者様が多いようです。
インプラントは高額だけど快適、入れ歯は安価だけど違和感がある・・・。どちらを選ぶべきか、その判断基準はどこにあるのでしょうか。
この記事では、歯科医師として約20年間の臨床経験から、インプラントと入れ歯それぞれの特徴やメリット・デメリット、そして患者様の状態に合わせた最適な選択方法について詳しく解説します。あなたにとって最適な選択肢を見つける参考にしてください。
インプラントと入れ歯の基本的な違い
まずは、インプラントと入れ歯の基本的な違いについて説明します。
インプラントは、失った歯の根の代わりにチタン製の人工歯根を顎の骨に埋め込み、その上に人工の歯を装着する治療法です。一方、入れ歯は歯茎に吸着するプラスチック製の床と人工歯を組み合わせた取り外し可能な装置です。
この構造の違いが、装着感や機能性、見た目、そして費用にまで大きな差を生み出しています。
私が日々の臨床で感じるのは、どちらが「良い」「悪い」という単純な話ではなく、患者さんの口腔内の状態や生活スタイル、予算などによって最適な選択肢が変わるということです。
インプラントの特徴

インプラントは「第三の歯」とも呼ばれ、天然歯に最も近い感覚で使用できる治療法です。
顎の骨に直接固定されるため、噛む力が強く安定性に優れています。実際、天然歯とほぼ同等の咬合力が得られるため、硬い食べ物でも問題なく噛むことができます。
また、見た目の自然さも大きな特徴です。特に前歯のインプラントは、適切に処置すれば天然歯との区別がつかないほど美しく仕上げることが可能です。
さらに、インプラントは顎の骨に負荷をかけることで骨の吸収を防ぐ効果もあります。これは長期的な口腔健康維持の観点からも重要なポイントです。
入れ歯の特徴
入れ歯は取り外しが可能な補綴物で、部分入れ歯と総入れ歯があります。
最大の特徴は、外科手術を必要としないことと、比較的短期間で治療が完了する点です。また、保険適用となるため、経済的負担が少ないことも大きなメリットです。
ただし、装着感や機能面ではインプラントに劣る部分があります。噛む力は天然歯の20〜30%程度とされ、長期使用により顎の骨が徐々に痩せていくという問題もあります。
それでも近年は入れ歯の技術も進化しており、金属床を使用した自費診療の入れ歯では、装着感や機能性が大幅に向上しています。
インプラントのメリット・デメリット
インプラントを検討されている方のために、そのメリットとデメリットを詳しく解説します。
私の臨床経験から言えることは、インプラント治療は適切な症例選択と処置を行えば、患者様の生活の質を大きく向上させる素晴らしい治療法だということです。
インプラントの主なメリット
インプラントの最大のメリットは、天然歯に近い使用感と機能性です。具体的には以下のようなメリットがあります。
- 安定した噛み心地:顎の骨にしっかりと固定されるため、ぐらつきがなく安定した噛み心地を実現します。
- 高い咬合力:天然歯とほぼ同等の噛む力が得られるため、食事の制限がほとんどありません。
- 優れた審美性:特に前歯部では、天然歯と見分けがつかないほど自然な見た目を実現できます。
- 周囲の歯への負担軽減:ブリッジのように隣の健康な歯を削る必要がありません。
- 骨吸収の防止:顎の骨に適度な刺激を与えることで、骨の萎縮を防ぎます。
- 長期的な耐久性:適切なメンテナンスを行えば10〜15年、場合によってはそれ以上使用できます。
これらのメリットから、よく噛める状態にしたいとご希望で特に若い世代や活動的な生活を送る方、見た目を重視する方にはインプラントをお勧めしています。
インプラントのデメリット
一方で、インプラントにはいくつかのデメリットも存在します。
- 高額な治療費:自由診療となるため、1本あたり40万円〜50万円程度の費用がかかります。
- 外科手術が必要:歯茎の粘膜を切開し顎の骨に穴を開けてインプラント体を埋入する手術が必要です。
- 治療期間が長い:骨とインプラントが結合するまでに数ヶ月かかるため、全体の治療期間は3ヶ月〜1年程度必要です。
- 骨の量が不足している場合は追加処置が必要:骨造成などの追加処置が必要になることがあります。
- 全身疾患による制限:糖尿病や骨粗鬆症などの疾患がある場合、治療が制限されることがあります。
私の診療では、これらのデメリットを患者さんに正直にお伝えした上で、それでもメリットが上回ると判断される場合にインプラント治療をご提案しています。
入れ歯のメリット・デメリット

次に、入れ歯のメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。
入れ歯は長い歴史を持つ治療法ですが、近年は素材や製作技術の進歩により、かつてのイメージよりも快適に使用できるようになっています。
入れ歯の主なメリット
入れ歯には以下のようなメリットがあります。
- 経済的な負担が少ない:保険適用の入れ歯であれば、3割負担で2万円程度で作製できます。
- 外科手術が不要:非侵襲的な治療のため、高齢の方や全身疾患をお持ちの方でも比較的安全に治療できます。
- 短期間で治療完了:型取りから装着まで2〜4週間程度で完了します。
- 修理や調整が容易:破損した場合の修理や、違和感がある場合の調整が比較的簡単にできます。
- 将来的な選択肢を残せる:後にインプラントに変更することも可能です。
特に、全身疾患をお持ちの高齢の方や、経済的な理由からインプラントを選択できない方には、入れ歯は現実的な選択肢となります。
入れ歯のデメリット
一方で、入れ歯には以下のようなデメリットも存在します。
- 装着感や違和感:特に初めて使用する方は、異物感を強く感じることがあります。
- 咬合力の低下:天然歯の20〜30%程度の噛む力になるため、硬いものが噛みにくくなります。
- 発音への影響:特に上顎の総入れ歯では、発音に影響が出ることがあります。
- 定期的な調整が必要:顎の骨の変化に合わせて、定期的な調整が必要です。
- 顎の骨の吸収:長期使用により顎の骨が徐々に痩せていきます。
- 見た目の自然さ:特に金属のクラスプ(バネ)が見えることがあり、審美性に劣る場合があります。
私が患者様に入れ歯をお勧めする際は、これらのデメリットも含めて説明し、期待値を適切に設定していただくようにしています。
インプラントと入れ歯の費用比較
治療法を選ぶ上で、費用は重要な判断材料です。インプラントと入れ歯の費用について詳しく比較してみましょう。
私の臨床経験から言えることは、単に初期費用だけでなく、長期的なメンテナンス費用や耐久性も含めた「トータルコスト」で考えることが大切だということです。
インプラントの費用
インプラント治療は基本的に保険適用外の自由診療となります。一般的な費用の目安は以下の通りです。
- 1本あたりの費用:40万円程度(インプラント体、アバットメント、上部構造を含む)
- CT撮影や診断費用:1.5万円程度
- 骨造成が必要な場合の追加費用:1〜30万円程度
- 年間メンテナンス費用:1〜2万円程度
全顎のインプラント治療(オールオン4など)では、片顎で180〜400万円程度かかることもあります。
高額ではありますが、適切なメンテナンスを行えば10年以上使用できるため、長期的に見ると必ずしも不経済とは言えません。
入れ歯の費用
入れ歯の費用は、保険適用か自由診療かで大きく異なります。
- 保険適用の部分入れ歯:3割負担で4,000〜9,000円程度
- 保険適用の総入れ歯:3割負担で2万〜2万5,000円程度
- 自費診療の金属床入れ歯:10〜50万円程度
- 自費診療の高機能入れ歯:30〜100万円程度
- 調整・修理費用:保険適用で数百円〜数千円程度
入れ歯は3〜7年程度で作り替えが必要になることが多いため、長期的なコストも考慮する必要があります。
長期的なコスト比較
初期費用だけを見るとインプラントは高額ですが、耐久性や快適性、メンテナンス費用を含めた長期的な視点で考えると、必ずしも入れ歯が経済的とは言えません。
例えば、40代で入れ歯を選択した場合、7年ごとに作り替えると仮定すると、生涯で何度も作り替えが必要になります。一方、インプラントは適切なメンテナンスを行えば、一生使用できる可能性もあります。
また、インプラントによって得られる生活の質の向上や、周囲の歯を守る効果なども、金銭的には計れない価値があります。
患者様には、こうした長期的な視点も含めて治療法を選択していただくようアドバイスをしています。
年齢別・状況別の選び方
インプラントと入れ歯、どちらが自分に合っているのか。これは年齢や口腔内の状態、全身の健康状態、経済的な事情など、様々な要素によって異なります。
ここでは、年齢層や状況別に、一般的にお勧めできる選択肢について解説します。
若年層〜中年層(20代〜50代)の場合
若年層から中年層の方には、一般的にインプラントをお勧めすることが多いです。その理由は以下の通りです。
- 長期的な視点:若いうちからインプラントを入れることで、長期間にわたって快適な生活を送れます。
- 早期に欠損をインプラントで補うことができれば残存歯の負担は軽減され、それ以上に喪失するリスクが低くなります。
- 骨・全身状態:若い方は一般的に骨の量や質が良好で、インプラント治療の成功率が高いです。健康状態も問題ない方がほとんどのため、手術の制約もありません。
- 活動的なライフスタイル:仕事や社交活動が活発な時期に、安定した噛み心地と自然な見た目は大きなメリットです。
- 経済的余裕:働き盛りの時期は比較的経済的な余裕があり、高額な初期投資も検討しやすいです。
特に前歯部の欠損や、1〜2本程度の少数歯欠損の場合は、インプラントの恩恵が大きいと言えます。
ただし、若年層でも経済的な理由や、全身疾患などの理由でインプラントが難しい場合は、入れ歯も選択肢となります。
高齢層(60代以上)の場合
高齢の方の場合は、全身状態や残存歯の状態、経済的な事情などを総合的に判断して治療法を選択します。
- 全身状態が良好な場合:70代、80代でも全身状態が良好であれば、インプラント治療は十分に選択肢となります。
- 多数歯欠損の場合:残存歯が少ない場合、すべてをインプラントにするのではなく、戦略的にインプラントを数本埋入し、その上に入れ歯を固定する「インプラントオーバーデンチャー」という選択肢もあります。
- 全身疾患がある場合:糖尿病や骨粗鬆症、心疾患などがある場合、外科手術のリスクを考慮して入れ歯を選択することもあります。
- 経済的な事情:経済的な制約がある場合は、保険適用の入れ歯が現実的な選択肢となります。
高齢の方でも、「残りの人生を快適に過ごしたい」という思いから、インプラントを選択される方も少なくありません。一人ひとりの状況に合わせた最適な選択をサポートすることが、私たち歯科医師の役割だと考えています。
特殊な状況での選択
以下のような特殊な状況では、それぞれに適した選択肢があります。
- 糖尿病患者の場合:コントロールが良好であれば、インプラントも可能ですが、リスクが高い場合は入れ歯を検討します。
- 骨粗鬆症で薬物療法中の場合:ビスフォスフォネート系薬剤(特に注射剤)を使用している場合、顎骨壊死のリスクがあるため、インプラントは慎重に判断する必要があります。
- 喫煙者の場合:喫煙はインプラントの成功率を低下させるため、禁煙をお勧めするか、リスクを説明した上で治療を検討します。
- 経済的な制約がある場合:保険適用の入れ歯から始めて、将来的に経済的余裕ができた時点でインプラントに移行するという段階的なアプローチも可能です。
どんな状況でも、患者様一人ひとりの背景や希望を尊重し、最適な治療法を一緒に考えていくことが大切だと考えています。
まとめ:あなたに最適な選択とは

インプラントと入れ歯、それぞれの特徴やメリット・デメリットについて詳しく見てきました。では、あなたにとって最適な選択肢はどちらでしょうか。
最終的な判断は、以下のポイントを総合的に考慮して行うことをお勧めします。
- 口腔内の状態:残存歯の数や位置、骨の量や質はどうか
- 全身の健康状態:外科手術に耐えられる健康状態か、リスク要因はないか
- 年齢と将来の展望:長期的な視点で考えた場合の費用対効果はどうか
- 生活スタイル:活動的な生活を送るか、食事の楽しみを重視するか
- 審美性の重視度:見た目の自然さをどの程度重視するか
- 経済的な事情:初期投資の余裕があるか、長期的なコスト計算はどうか
これらの要素を考慮した上で、歯科医師と十分に相談し、あなたにとって最適な選択をすることが大切です。
間瀬デンタルクリニックでは、患者様一人ひとりの背景や希望を尊重し、最適な治療法を一緒に考えていくことを大切にしています。インプラントと入れ歯のどちらが良いかという単純な答えはなく、あなたにとっての「幸福医療」を実現することが最も重要だと考えています。
歯の治療に関するご相談やお悩みがありましたら、ぜひ当院にお気軽にご相談ください。あなたの笑顔と健康な生活をサポートするために、最適な治療法をご提案いたします。
監修医師情報
医療法人社団幸陽会 間瀬デンタルクリニック
院長 間瀬 慎一郎

【経歴】
- 千葉県立木更津高校 卒業
- 日本大学松戸歯学部 卒業
- 日本大学松戸歯学部付属病院 歯科臨床研修 修了
- 医療法人社団翆聖会 パール歯科医院 佐野 勤務
- 間瀬歯科医院 勤務
- 医療法人社団幸陽会 間瀬デンタルクリニック設立 理事就任
- 医療法人社団幸陽会 間瀬デンタルクリニック 院長就任
【所属】
- 日本歯科医師会会員
- 千葉県歯科医師会会員
- 千葉県保険医協会会員
- 千葉県歯科医師会認定口腔がん検診医
- 君津木更津歯科医師会会員 委嘱富津市医
- 富津市立大貫小学校 学校歯科医
- 学校法人富津学園 明澄幼稚園 園医
- 東京医科歯科大学歯周病科 研修登録医
- 岩手医科大学補綴・インプラント学講座研修生
- 介護認定審査会 委員
【学会・研究会】
- 日本歯周病学会会員
- 日本口腔インプラント学会会員
- 日本顎咬合学会会員
- 日本アンチエイジング歯科学科会員
- 点滴療法研究会会員
- スタディグループJIADSclub研究会会員
【認定資格】
- 厚労省指定 歯科医師臨床研修指導歯科医師
- 日本歯周病学会 認定医
- 日本顎咬合学会 かみ合わせ認定医
- 日本アンチエイジング歯科学会 認定医
- 点滴療法研究会 高濃度ビタミンC点滴療法認定医
- ガイドデント認定会員
- JAOS 第二種歯科感染管理者
- AHA BLSヘルスケアプロバイダー
- smileTRU 認定医
- 日本糖尿病協会 登録歯科医
【CERTIFICATE・講習会参加履歴】
- JIADS歯周病コース 修了
- JIADSインプラントコース 修了
- JIADS歯内療法コース 修了
- JIADS補綴コース 修了
- ハーバード大学・岩手医科大学合同インプラントコース inボストン 修了
- ハーバード大学・岩手医科大学合同包括歯科医療コース 修了
- ハーバード大学 CE コース for Japan 特別講義
- 目白臨床歯周病研究会 ペリオコース 修了
- Microscopic Dentistry Training course in デンタルみつはし 修了
- アンカースクリュー矯正(インプラント矯正)実習コース 修了
- 一般臨床家矯正基礎実習6カ月コース 修了
- 医療安全管理研修 修了
- 学際企画セミナー 受講多数
- 在宅医療を行う歯科医師等育成研修会 修了
- 第27期SBC(Surgical Basic Course)歯周形成外科コース 修了
- 点滴療法研究会 ベーシックセミナー 受講
- 東京医科歯科大学CDE(歯周病・歯内療法・補綴ほか受講多数)
- 日本歯科医師会 生涯研修事業 修了
- AHA BLSヘルスケアプロバイダーコース 修了
- AII 骨造成を成功させるためのインプラント外科実習コース 修了
- CDAC よくわかる実践的歯科麻酔学 受講
- What’s New-Updated COVID-19 Guidelines for Dentists: Myth vs. Fact 修了
- 歯周組織再生療法コース エムドゲイン CERTIFICATE
- KENTEC アルファタイトインプラント CERTIFICATE
- Nobel Biocareインプラント CERTIFICATE
- straumannインプラント CERTIFICATE
- シロナ セレック ベーシックコース 修了
- シロナ セレック ステインハンズオンコース 修了
- その他 学会参加・受講セミナー多数