「目でしっかり確認」する根管治療
マイクロスコープを利用した根管治療(根っこの治療・神経の治療)
むし歯が進行すると、歯の内部にある神経まで達してしまうことがあります。神経まで感染が広がっている場合、そのままでは歯の保存が難しくなります。歯を残すためには、感染した神経を取り除き、神経が通っている管(根管)を丁寧に清掃・消毒したうえで、薬剤を詰めて密閉します。その後、被せ物で歯を補強し、細菌の再侵入を防ぐことで、再発のリスクを減らします。
この一連の流れが「根管治療」です。
根管治療は比較的一般的な治療ではありますが、実際には非常に繊細で高度な技術を要します。根管は非常に複雑に枝分かれしており、すみずみまで確実に清掃・消毒を行うことが難しいため、慎重な対応が必要となります。

黒く写っている部分が、神経が入っている管(根管)です。歯を長持ちさせるには、この複雑な根管内を、できる限り無菌に近い状態に保つ必要があります。 保険診療の範囲内では、根管治療はほぼ肉眼で行われています。しかし、肉眼では、細かい根管の内部まで正確に確認することが難しく、勘や経験に頼らざるを得ない場面が出てきます。その結果、細菌がわずかに残り、「再治療」や「抜歯」といった選択を迫られるケースも少なくありません。

こうした課題に対して、間瀬デンタルクリニックでは、マイクロスコープ(歯科用実体顕微鏡)を用いた治療を行っています。
マイクロスコープを導入することで、肉眼では見えない部分まで拡大(4.2倍〜24倍)して確認でき、より正確で確実な治療が可能になりました。明るく拡大された視野で治療の様子を記録することもできます。

画像は、実際にマイクロスコープで見た歯の内部の様子です。肉眼では捉えきれない細部まで鮮明に確認できます。
根管治療だけでなく、むし歯治療や歯周病の診査、口腔外科など、さまざまな治療分野で活用されており、より精度の高い治療を目指しています。

治療精度の向上に大きく貢献するマイクロスコープですが、導入している歯科医院は全国でも1割未満です。
当クリニックではマイクロスコープの中でも性能に定評のある、カールツァイス社製のマイクロスコープを導入し、積極的に治療に取り入れています。
CT(三次元立体画像)を利用した根管治療
CTは、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)と同様に、見えにくかった部分を「見える化」する機器です。通常のレントゲン(デンタルエックス線写真)でもおおまかな情報は把握できますが、CTを使うことで、より細かい構造や見つけにくい病変の正確な位置・大きさ・形まで立体的に把握することができます。これにより、より一層精密な診査・診断・治療が可能になります。
特徴1ラバーダム防湿の利用

ラバーダムとは、ゴムやその類似素材でできたシートを使い、治療する歯をお口の中の他の部位から隔離するための器具です。治療中に唾液や細菌が歯の内部へ入り込むのを防ぎ、他の部位を水や薬剤から守ることができます。
患者様にとっては、より清潔で安心できる治療環境が整い、歯科医師にとっても、唾液や呼気によるミラーの曇りや視野の妨げが軽減されるため、治療の安全性と精度が高まります。
こうしたメリットから、当クリニックでは自由診療においてラバーダム防湿を積極的に導入しています。
特徴2根管長測定器の利用

根管治療では、器具を入れる深さを正確に測るために「根管長測定器」を使用します。当クリニックでは、世界的に高いシェアを持ち、多くの学術論文でも使用されている「Root ZX(ルートジーエックス)」を導入しています。
特徴3歯に優しいニッケルチタンファイルの利用

根管治療では、細菌に侵された部分を除去するために「ファイル」と呼ばれる器具を使用します。当クリニックでは、従来のステンレス製ファイルに比べて柔軟性が高く、複雑な根管形態にも対応しやすい「ニッケルチタンファイル」を採用しています。これにより、患者様お一人おひとりの歯の形状に合わせた、より理想的な治療を提供することができます。
特徴4超音波治療器の利用

歯は部位ごとにおおよその形が決まっており、歯科医師はその構造を把握したうえで根管治療を進めています。しかし、実際には一本一本の歯に個体差があり、ファイルだけでは十分に対応できないケースもあります。こうした場合、処置しきれなかった感染部位が残り、治癒が妨げられる原因となることがあります。
そのようなケースでは、超音波を用いた器具を使用し、患者様それぞれの歯の形に合わせて根管を丁寧に削ることで、細菌に感染した部分を除去し、治癒を促します。
特徴5人体に害の少なく効果の高い消毒剤の選択
根管治療が複数回にわたる場合、次回治療までの間に根管内へ消毒作用のある薬剤を仮詰めするのが一般的です。当クリニックでは、人体への影響が少なく、さまざまな細菌に対して長期間作用する「水酸化カルシウム」を主に使用しています。
ただし、水酸化カルシウムは薬効成分が周囲に広がりにくく、薬剤が詰まった部分にしか効果がないという特性があります。そのため当クリニックでは、マイクロスコープを用いて根管内を確認しながら、必要な部位に確実に薬が届くよう丁寧に充填しています。
処置症例のご紹介
当クリニックで実際に処置した症例をご紹介します。他院で「抜歯が必要」と診断された歯でも、抜歯に頼らず、歯の保存を実現した症例が数多くあります。
根の治療(感染根管治療)・インプラントの隣の歯を抜歯せず残した症例

| 症状 | 左下奥、インプラントのあたりが噛むと違和感が有るとのことで来院されました。 診察の結果、インプラントには異常は認められず、一本手前の被せものが入っている歯が違和感の原因でした。 過去に根の治療が行われた歯ですが、エックス線写真では、二股に分かれた根の間(分岐部)と、それぞれの根の先端、計3か所の骨が失われ、 黒い影となって写っています。 | ||
|---|---|---|---|
| 治療方法 | 根の治療の再治療を行いました。 古い被せもの、その下の土台(コア)、治療時には汚染されてしまっていた、根の中の詰め物。 これら全てをマイクロスコープを活用し、歯へのダメージを最小限にとどめながら取り除きました。 その後、薬剤で根の中を徹底的に消毒し、再び根管充填を行いました。 | ||
| かかった治療費 | 根の治療費用(大臼歯):円 自費の補綴物:8万5000円 | 治療期間・回数 | 1年・5回 |
| 備考 | 下の奥歯(大臼歯)は、比較的根の治療が難しいと言われている部位で、再治療となると難度はさらに上昇します。 根の治療が上手く行かない場合は、外科処置や抜歯が必要となる可能性がありますが、隣にインプラントがある事を考えると、 周囲に大きなダメージが加わる可能性のある治療は避けたいところです。 今回は根の治療のみで症状を落ち着かせることが出来たため、周囲への影響は少なく済ませることが出来ました。 | ||
抜かなきゃダメ!? 抜歯を勧められた歯を根管治療で残した症例

| 症状 | 奥歯に痛みが有るとのことで来院。 エックス線写真で確認すると、むし歯は大きく、歯の周囲の骨も大分失われているように見えます。 通常、この写真のように根の先端まで骨が失われた場合、歯周病が進んでいたり、歯が折れている可能性が疑われ、 抜歯を勧められることも珍しくありません。 | ||
|---|---|---|---|
| 治療方法 | 診察の結果、骨が失われている原因はむし歯による歯の根への細菌感染がメインであると思われた事と、 患者さんの強い希望もあり、根の治療を行うこととしました。 感染源であるむし歯を徹底的に除去し、治療期間中に根の中に菌が入らないよう環境を整えた上で、 根の中をやはり徹底的に消毒し、根管充填を行いました。 根の治療と並行して、衛生士と協力しての歯周病治療も実施しています。 患者さんご自身も、口の中のお手入れを非常に一生懸命に取り組んでくださりました。 吸収された骨が大分回復したのを確認し、被せものを作製、装着。結果として抜歯を回避することが出来ました。 | ||
| 備考 | 根の治療は3、4回程度で終了しましたが、骨が回復していくまでには半年以上の期間、経過観察が必要でした。 その間も、歯周病治療、そして患者さん自身のお手入れがしっかりと行われていたことも良い結果を得るのに必要な事でした。 歯の根の間(分岐部)にはエックス線写真上で影が未だ認められますが、患者さんのお手入れが良好であるため 定期的にメインテナンスにお越し頂く事で歯ぐきの手術等は行わず、経過を見ています。 | ||
根管治療でも対応が難しいケース
すべての歯が根管治療によって保存できるわけではありません。適切な処置を行っても、歯の状態によっては治療による改善が見込めないケースも存在します。そのような場合、無理に治療を続けることは、患者様にとって通院や費用などの負担を増やしてしまいます。
- 根尖(歯の根の先)病変の原因が、根管の外にある場合(根尖外バイオフィルム)
- 歯が大きく破折している場合(歯冠・歯根の破折)
- むし歯が深く進行し、治療後に被せ物を支える歯質がほとんど残らない場合
当クリニックでは、マイクロスコープを用いた精密な診査・診断に加え、治療経過を画像で記録し、抜歯が必要と判断した場合には、できる限り早期に患者様にお伝えし、その後の治療についてご提案いたします。
その他のマイクロスコープを利用した治療のご紹介
マイクロスコープは、根管治療だけでなく、その他幅広い分野で活用しています。
むし歯の治療
むし歯治療では、むし歯に侵された部分をしっかり取り除き、削った部分を詰め物や被せ物で自然に整えることが大切です。
マイクロスコープを使えば、明るく拡大された視野のもと、必要なところだけを的確に削ることができ、取り残しを防ぐことで、治療の精度を高めることができます。
神経を残すための処置(直接覆髄・間接覆髄)
むし歯が神経にまで達している場合、多くは神経を取り除く治療(根管治療)が必要になりますが、可能であれば神経を残すことが望ましいとされています。むし歯が深く進行していても、神経に強い炎症や感染が見られず、保存が可能と判断される場合には、神経を保護する治療を行うことがあります(覆髄〈ふくずい〉と呼びます)。
この治療では、むし歯の取り残しがないか、神経に細菌感染がないか、薬剤が十分に届いているか、そして密閉性の高いふたができているかなど、一つひとつの処置に高い精度が求められます。こうした確認や操作をより確実に行うために、マイクロスコープによる拡大視野が役立ちます。
外科治療
抜歯や外科処置の際、病変が目視で確認しづらいことが、治療を難しくしたり、取り残しの原因になったりすることがあります。マイクロスコープによる拡大視野は、こうした見えづらい部分の確認や、取り残しの防止に役立ちます。
また、マイクロスコープはさまざまな角度から口腔内を観察できるため、肉眼では確認できなかった部位までしっかり見ることが可能です。さらに、歯や骨を削る場合も、削る量を最小限に抑えることができるため、患者様への負担を軽減します。
コア・破折片の除去
被せ物の芯棒(コア)が大きすぎる場合や、根管内に治療器具の破片が残っている場合など、根管治療が難しくなることがあります。
こうしたケースに肉眼で対応するのは非常に困難ですが、マイクロスコープを用いることで、これまで対応が難しいとされていた状態にも、一定の範囲で対処できる可能性が広がります。

マイクロスコープの特長のひとつに、治療の過程や結果を映像で記録し、患者様と共有できる点があります。
お口の中の状態や治療内容、今後の進め方など、映像を通してわかりやすくお伝えすることができます。
歯を失った際の処置
- 被せ物をしていた歯がグラついていたため、被せ物を外して確認してもらったところ、土台の歯が折れていることがわかりました。抜歯が必要と診断され、インプラントを勧められていますが、他に治療の選択肢はないでしょうか?
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歯を失ったあとの治療法には、大きく分けて次の3つの方法があります。
1ブリッジ
ブリッジとは、失った歯の両隣の歯を削って土台とし、その上に連結した被せ物を装着して補う固定式の治療法です。保険適用で作製できる場合も多く、比較的しっかり噛める状態に整えることができます。
ただし、失った歯の位置や本数、支えとなる歯の状態、噛み合わせなどによっては、適用できないケースもあります。また、隣の歯にむし歯や被せ物がない場合には、健康な歯を大きく削ることになるため、慎重な判断が必要です。2入れ歯
部分入れ歯は、歯を失った部分に人工の歯を装着する取り外し式の装置です。
保険適用のものでは、金属のばねが残っている歯にかかるため、見た目で入れ歯だとわかってしまうことがあります。また、装着時の違和感や噛み心地は、ブリッジと比べて劣ることがあります。その一方で、治療費を比較的抑えられるという大きなメリットがあります。
見た目が気になる場合には、自由診療となりますが、金属のばねを使わないタイプの入れ歯を作ることも可能です。そのほかにも、痛みが出にくいものや、薄くてしっかり噛めるタイプなど、さまざまな種類の自由診療の入れ歯をご用意しています。3インプラント
インプラントは、人工の歯根を顎の骨に埋め込み、その上に土台と被せ物を装着する治療です。取り外しの必要がなく、ほぼ自分の歯のようにしっかり噛むことができます。隣の歯を削る必要がないため、健康な歯に負担をかけにくいというメリットもあります。一方で、保険適用外のため費用は高く、手術が必要となることから治療期間も比較的長くなります。長く使い続けるためには丁寧なケアが欠かせません。
実際の治療方針は、お口の状態を詳しく拝見し、治療期間や費用、見た目などのご希望を伺ったうえで、担当医と相談して決めていきます。親知らずの移植や、矯正によって欠損部位を閉じる方法など、状況によってはほかの選択肢をご提案できる場合もございます。 治療方法についてご不明な点がありましたら、コーディネーターまでお気軽にご相談ください。

