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感染症対策は口元から?ウイルスから体を守る口腔ケア

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口腔ケアは感染予防につながる?

ウイルスの感染予防と聞くと、まず何を思い浮かべますか?大抵の場合はうがいや手洗い、マスクの着用やアルコールによる手指の消毒ではないでしょうか。実はここに、口腔ケアによる「清潔に保たれた口」が存在することは、重要でありながらもあまり知られていません。
近年は自粛による歯科医院への受診控えや、在宅時間の増加と共に間食が増えたなどの理由によって、子どもを含め口腔環境が悪化傾向にあります。この口腔環境の悪化により、ウイルスや細菌による感染リスクが高まる点が懸念されているのです。

ウイルス性感染症に関する近年の研究

口腔環境とウイルス性感染症についての研究では、ウイルス性感染症であるインフルエンザの発症率が、口腔ケアによってなんと10分の1になったことが報告されています。
この調査では、老人ホームのデイケアに通っている高齢者を対象に、①通常のセルフケアのみ ②セルフケア+週に1回歯科衛生士によるプロフェッショナルケアと歯磨き指導、の2つのグループに分け、半年間その経過観察が行われました。
結果、②のグループは①のグループよりも風邪の発症率が40%、インフルエンザの発症率は90%も低いという、専門家による口腔ケアを実施していたグループがウイルス性感染症の発症率を非常に低く抑えたという結果となりました。
この調査結果から、お口の中を清潔に保つことは、感染症に対して有効性が高いことが窺えます。

口腔ケアがウイルス性感染症に効果的な理由

ウイルスの侵入を促進する細菌を抑制

お口の中には、常在菌をはじめとした多くの細菌が存在しています。普段これらの細菌が悪さをできないのは唾液の働きや、お口の中に「Ig A」と呼ばれる免疫の抗体が存在するためです。IgAは口腔内の粘膜に存在し、細菌やウイルスの侵入を防ぐ役割を担っています。
しかし、お口の中が不潔な状態になると、細菌が増殖して口内の細菌バランスが崩れはじめます。そして、歯周病菌などが産生するタンパク質分解酵素がウイルスの侵入を助け、感染症に罹りやすくなってしまうのです。
これらのことから、口腔ケアによってお口を清潔に保つことは、感染症の予防に効果的であると言えます。

腸内環境を整え、免疫力を向上させる

お口が不潔になることで活発化する歯周病菌などの細菌は、言うなれば「悪玉菌」です。繁殖したこれらの細菌が、飲食によって腸内に運ばれるとどうなるでしょうか?
そう、腸内環境のバランスが乱れることにより、免疫力の低下が起こるのです。免疫力の低下は感染症に罹患しやすいだけでなく、重症化や合併症リスクも高まります。口腔ケアをしっかりと行い、細菌による免疫力の低下を防ぐことは非常に重要です。

誤嚥性肺炎の悪化を防ぐ

「誤嚥」とは、食べ物や飲み物が気道に入ってしまうことであり、誤嚥がきっかけで起こる肺炎を「誤嚥性肺炎」と言います。通常、気道に入った飲食物は咳などの反射によって誤嚥を防ぐことができます。しかし、飲み込む機能が低下した高齢者の方などはそのまま気道へ入り、このときお口の中の細菌も一緒に肺へと侵入してしまいます。
この誤嚥から肺炎を起こす方は非常に多く、死因の中でも上位に入るほど重篤化しやすい疾患です。さらに、口腔内細菌の誤嚥によって肺炎を起こしている中、同時にコロナウイルスによる肺炎が併発すると、重篤化は免れないだろうと言われています。感染症の重症化予防のためにも、口腔ケアは不可欠であると言えます。

口腔ケアのポイントについて

歯磨き指導で正しいケア方法を身につける

デンタルフロスや歯間ブラシ、タフトブラシなどの補助的な清掃道具には、その人にあった使い方や選び方が必要です。どこが磨けていないのか、どういうふうにブラシを当てればいいのかをしっかりと理解した上でケアを行うと、ただがむしゃらにセルフケアをしているよりもはるかに高い清掃効果を発揮します。個々の歯並びや歯ぐきの状態にあった口腔ケア方法を知るためにも、まずは1度歯磨き指導を受けて正しい方法を身につけましょう。

寝る前には念入りに歯磨きを

私たちが眠っている間、自浄作用を担っている唾液はほとんど分泌されません。つまり、就寝中は細菌が好む絶好の繁殖環境であり、お口の細菌が増殖しやすい状態でもあります。そのため、寝る前には特に丁寧な口腔ケアが必要です。朝や昼などの歯ブラシが難しいという場合でも、夜寝る前にはきちんと歯磨きをすることで、虫歯や歯周病のリスクを抑えることができます。

お口の乾燥に気をつける

唾液の分泌が少ない就寝時と同様に、日中でもお口の中が乾燥することで細菌が繁殖しやすくなってしまいます。お口の中の乾燥を防ぐためにも、食事の際はよく噛み、鼻呼吸を心がけ、できるだけお口の中を乾燥させないようにしましょう。

トータルケアで口腔環境を改善することの重要性

口腔環境を改善するためには、歯磨きだけでは不十分です。環境改善には歯磨きの他にも、細菌やその代謝産物が付着した「舌苔(ぜったい)」の除去や、頬などの粘膜に付着した細菌を取り除く「うがい」など、総合的な口腔ケアが必要であると言えます。
また、どんなに磨けている方でも、歯周ポケットの内部や奥歯の裏側には、微細な歯石やプラーク(歯垢)が残ります。このような細菌が繁殖する足掛かりになる付着物を、歯科医院でのクリーニングで除去するのは、口腔ケアにおいて非常に重要です。
つまり、歯磨きやうがいなど毎日のセルフケアに加え、定期的なメインテナンスで専門的な口腔ケアを受けることが、口腔環境を良好に保つことへつながります。

まとめ

お口を清潔に保つことは、虫歯や歯周病だけでなく、ウイルスや細菌による感染症の予防にもつながります。
口腔ケアとウイルス性感染症の関係を調査した結果にもあったように、感染症の予防には日々の歯ブラシだけでなく、クリーニングや歯磨き指導など専門家の介入が必要です。毎日の適切なセルフケアに加え、定期的にプロフェッショナルケアを受け、お口の中から全身の健康を守りましょう。

当院では実際に、一度染め出しと言って歯面のプラーク(細菌の塊)を色を付けて分かるようにします。2色に分かれて染め出されてくるので、最近のプラークか2週間以上の古いプラークかを見分けることが出来ます。どこにプラークがついているのか、古いプラークがついている場所は普段からケアできていない可能性も高いです。一人一人患者様にあったケアの方法のご提案をさせていただいております。患者様のお口健康を守ることで全身の健康づくりを目指してスタッフ一同努力してまいります。