~秋冬にウイルス感染症が流行しやすくなる理由~
秋や冬は気温や湿度が低くなり、ウイルスは水分を失って、空中に浮遊しやすくなります。このような環境の中では、ウイルスの生存期間が長くなるため、感染が広がりやすくなります。また、人は体温が低下すると免疫力が下がり、ウイルスに感染しやすい状態になります。
秋冬にかけて、特に子供がかかりやすい感染症は、感染性胃腸炎(ノロウイルス・ロタウイルス)やかぜ症候群、そして、インフルエンザです。
・感染性胃腸炎(ノロウイルス、ロタウイルス)
「感染性胃腸炎」とは、細菌やウイルスなどを原因とする胃腸炎の総称で、冬から春にかけて流行する傾向にあります。中でも、代表的なものが、ノロウイルスとロタウイルスです。11月頃からノロウイルス、2月頃からはロタウイルスと、冬場は感染性胃腸炎のリスクが高くなります。
<ノロウイルス>
子供だけでなく、大人でも高頻度で感染する胃腸炎です。
11~12月にかけての初冬に多く、基本的な症状は嘔吐と下痢です。
感染ルートは主に①汚染された食べ物を食べて感染するケース、②家族内や集団からの感染となります。
予防は一般の食中毒と同様です。しっかりと手洗いをする、食品は十分加熱する、感染者の吐物や排泄物の処理に気をつける等になります。
<ロタウイルス>
主にこどもの下痢、胃腸炎を引き起こすウイルスです。
「冬季下痢症」「白色便下痢症」とも呼ばれるように、秋から冬にかけて流行し、白っぽい便が出るのが特徴です。近年、流行のピークは3~5月にかけてとなってきています。このため、ノロウイルスと入れ替わるように流行し、冬季から春先にかけて注意が必要です。
ノロウイルスは大人も感染する一方、ロタウイルスは主にこどもに感染しやすい特徴があります。
大人もロタウイルスにかかって症状が出ることもありますが、乳幼児は激しい症状が出て脱水になったり、症状が長引きやすいです。
また、いくつかの型があるため、一度罹っても繰り返し感染することもあります。
ノロウイルスとロタウイルスは非常に症状が似ていますが、ロタウイルスはワクチンが開始されたため、重症化する感染者の数は減ってきています。
厚生労働省によると、ワクチンを接種することにより、ロタウイルス胃腸炎による入院患者を約70~90%減らすことができたと報告されています。詳しくは、厚生労働省のページをご参照ください。
・かぜ症候群
咳、鼻水、発熱などをきたす病気の総称で、いわゆる普通の「風邪」のことです。ライノウイルス等のウイルス感染によるものが主です。インフルエンザも広い意味ではこの中に含まれます。直接冷たい空気に接する喉や鼻の防御力が低下して、風邪をひきやすくなります。
症状が軽ければ、解熱剤等の対症療法や安静により自然軽快していきますが、以下のような場合は早めの受診が必要です。
・水分が取れない、乳児ではミルクや母乳の摂取量が少ない。尿が極端に少ない。
・咳がひどい。呼吸が苦しそう。咳込んで夜眠れない。
乳児で重症になるものではRSウイルス感染症が有名ですが、最近は冬でなくても流行が見られ、一年中注意が必要です。同じような症状をきたすヒトメタニューモウイルス感染症も最近増えてきています。
・インフルエンザ
そして、冬の風邪を代表するのがインフルエンザです。
例年は、1月から2月にかけての期間が流行のピークで、主な症状は発熱や鼻水、のどの痛み、咳などがあります。
インフルエンザは風邪と同じような症状ですが、一般的には風邪よりも症状が強く、40℃近い高熱が出ることもあります。
また、子供は熱が出やすく、特に乳幼児の場合は重症化する可能性があるため、早めに医療機関に診てもらうのがよいでしょう。
感染予防と重症化予防として最も有効な対策がワクチン接種です。
とくに乳幼児は重症化しやすいため、ワクチン接種が推奨されます。
毎年、各医療機関では10月よりワクチン接種を開始しています。
ワクチン接種は年齢により接種回数が異なり、生後6か月以上13歳未満までは2回の接種。10月より1回目を接種しおよそ2〜4週後に2回目を接種します。13歳以上の方は通常1回の接種です。
そのほかにも、手洗いやうがいの徹底、ソーシャルディスタンスの確保、出来る限りマスクの着用、部屋の加湿や換気といった、基本的な感染症対策を心掛けることが大切です。
また、感染症に関しては、流行りやすい季節があるものの、近年では季節問わずに感染することがあるため、日頃から手洗いなどの感染対策に努めましょう。